精密板金 wiz で対応可能な薄板金属材料・薄板板金加工技術など
精密板金 wiz における精密板金・板金加工・板バネ加工などで通常使用する材料、或いは加工可能な板金材料・薄板金属材料に関すること、板金加工方法として対応可能な薄板金属加工技術に関することなどをご紹介します。
対応可能な薄板金属材料・板金材料の種類や板厚
精密板金加工や板バネ加工において、精密板金 wiz で使用したことのある板金材料や薄板金属材料の種類には、これまで数多くの実績があります。
薄板金属材料・板金材料の種類にもよりますが、板厚については、板厚t0.01~t3.0程度まで薄板板金加工が多く、また、材質については、鋼板(鉄板)・表面処理鋼板、アルミ、ステンレス、伸銅品(銅、真鍮、バネ用リン青銅、バネ用ベリリウム銅等)、焼入れリボン鋼やベーナイト鋼等のバネ用炭素鋼帯など、数多くの薄板金属材料・板金材料に対応可能です。
詳しくは次のような材料・板厚が挙げられます。
(在庫状況の記号の説明)
- (◎) : 比較的多くの板厚を在庫している
- (△) : 一部の板厚を若干在庫している
- (×) : 通常は在庫していない(必要あれば都度購入して対応)
SPCC・SPHC鋼板(鉄板)、SECC・SGCCなどの表面処理鋼板
いわゆる鉄板や処理鋼板と言われるもので、板金加工における材料費用が最も低コストに抑えられる材料に類します。通常は、3×6(サブロク)定尺板からカットして板金加工に利用しています。
- SPCC鋼板(◎)
- 板厚 : t0.4~t3.2
みがき材(ミガキ材)と言われる冷間圧延鋼板
参考JIS規格 : JIS G 3141 - SPHC鋼板(×)
- 板厚 : t1.6~t3.2(酸洗板)
熱間圧延軟鋼板。酸洗材と黒皮(クロカワ。黒鉄板などとも言われる)とがある 。黒皮は板厚t3.2以上からが多い。
参考JIS規格 : JIS G 3131 - SECC鋼板(電気亜鉛めっき鋼板)(△)
- 板厚 : t0.6~t3.2
一般に、ボンデ鋼板が広く知られているが、ボンデ鋼板はメーカーの商品名であり、ほかにもリバージンク、コーベジンク、スミジンク、ユニジンクなどのメーカー呼称の電気亜鉛メッキ鋼板がある。
参考JIS規格 : JIS G 3313 - SGCC鋼板(溶融亜鉛めっき鋼板)(△)
- 板厚 : t0.6~t3.2
シルバージンク、リバーゼット、ガルバエース、タフジンク、バームジンク、ペンタイトなどのメーカー呼称の溶融亜鉛メッキ鋼板がある。
参考JIS規格 : JIS G 3302 - SS鋼材(SS400)(×)
- 板厚 : t4.0~
一般構造用圧延鋼材で、SS400(旧JIS記号:SS41)が最も一般的。主に機械加工用や構造用材料として用いられることが多い鋼材。
参考JIS規格 : JIS G 3101
ステンレス鋼板
SUS304やSUS316など、”SUS”の鋼材記号で表されることから、”さす(サス)”の呼び名でも知られ、機械部品や日常用品に至るまで広く利用されています。板金加工における材料費用としては鋼板(鉄板)と比べると5~8倍程度もコスト高ですが、強度や耐食性など優れた特性をもつ材料であるため、広い用途で利用されています。
中でも、板金材料としては、”SUS304-2B”が最も一般的で流通量も多く、精密板金 wiz におけるステンレス板の板金加工は、後述するSUSバネ材(ステンレスばね材)以外では、ほとんどがこの材料を利用しています。通常は、1×2メーター板の定尺板からカットして利用しています。
- SUS304-2B(◎)
- 板厚 : t0.3~t3.0
冷間圧延ステンレス鋼板。”さすさんまるよん-つーびー”と読む。板金材料で”さす(サス)”と言えば、通常はこの”SUS304-2B”のことを指し、単に”さんまるよん(304)”とも呼ぶ。
”2B”という記号はステンレス鋼板の表面処理記号(仕上がり別記号)の区分であり、適度なにぶい光沢を与える程度の軽い冷間圧延(調質圧延、スキンパスともいう)を施した冷間ブライト仕上材のこと。
参考JIS規格 : JIS G 4305 - SUS304-片研#400(△)
- 板厚 : t0.3~t3.0
SUS304-2B材の片面を、400番バフ研磨によって研磨仕上げしたステンレス板で、通称”片研”と言われる。研磨面は鏡面に近い光沢を持った仕上げが施されており、見た目の美しさや意匠性が求められるステンレス板金加工材料として利用される。
参考JIS規格 : JIS G 4305 - SUS304-BA(×)
- 板厚 : t0.5~t2.0
表面をBA仕上げしたステンレス鋼板。BA仕上げとは、冷間圧延の後、光輝熱処理を行い、さらに軽い冷間圧延(調質圧延、スキンパス)を施した仕上げのことで、B:ブライト(光輝)、A:アニーリング(焼きなまし)の略。研磨面は片研(#400研磨仕上げ)と同じように鏡面に近い光沢を持つ。
参考JIS規格 : JIS G 4305 - SUS304-HL(ヘアライン仕上げ)(△)
- 板厚 : t0.8~t3.0
2B材或いはBA仕上げ材に適当な粒度の研磨ベルトで細長い模様の研磨目をつけたステンレス鋼板。表面は髪の毛上の細く長い連続した研磨目(ヘアライン)をもつ。建材用に広く用いられている表面仕上げ材。
参考JIS規格 : JIS G 4305 - SUS316-2B(×)
- 板厚 : t1.0~t3.0
SUS304と同じくオーステナイト系ステンレス鋼板。SUS304よりさらに耐食性に優れ、非磁性体。
参考JIS規格 : JIS G 4305 - SUS430-2B(×)
- 板厚 : t1.0~t3.0
フェライト系ステンレス鋼板で、磁性体(磁石が着く)。キッチンや浴槽などのステンレス板としてよく利用される。
参考JIS規格 : JIS G 4305
ばね用ステンレス鋼帯(ステンレスばね材・SUSバネ材)
SUSバネ材(サスばねざい)”や”ステンレスばね材”などと呼ばれて、一般に薄板バネやエッチング材、シム板などによく用いられるバネ用ステンレス鋼帯です。
SUS304-CSP が最もよく利用され、バネ用途のステンレスの薄板としては通常はこの材料を利用します。
- SUS304-CSP(◎)
- 板厚 : t0.01~t2.0
オーステナイト系ばね用ステンレス鋼帯。ステンレス製の板バネ材料と言えば、通常はこの”SUS304-CSP”のことを指す。
参考JIS規格 : JIS G 4313 - SUS301-CSP(△)
- 板厚 : t0.1~t1.5
SUS304-CSPと同様、オーステナイト系ばね用ステンレス鋼帯。硬さ、耐力、引張強さ、ばね限界値などの機械的性質が SUS304CSPよりも優れている。
参考JIS規格 : JIS G 4313 - SUS631-CSP(×)
- 板厚 : t0.1~t1.2
析出硬化系ばね用ステンレス鋼帯。磁性体(磁石に付くステンレスばね材)
参考JIS規格 : JIS G 4313 - SUS632J1-CSP(×)
- 板厚 : -(市中材としての流通板厚不明)
SUS631-CSPと同じく析出硬化系ばね用ステンレス鋼帯。磁性体(磁石に付くステンレスばね材)
参考JIS規格 : JIS G 4313 - SUS420J2-CSP(×)
- 板厚 : -(市中材としての流通板厚不明)
マルテンサイト系ばね用ステンレス鋼帯。磁性体(磁石に付くステンレスばね材)
参考JIS規格 : JIS G 4313
アルミ板(アルミニウム合金板)
アルミ板には純アルミニウム板や、強度・加工・成形性・耐食性・溶接性などの改善を目的とした各種のアルミ合金板など、数多くの種類のアルミ板がありますが、通常、板金材料として利用されるアルミ板は、Al-Mg系合金の”A5052P”です。
A5052P は、板金用の板材として、「52S(ごーにーえす)」や、単に、「5052(ごーまるごーにー)」などとも呼ばれて幅広い分野で用いられています。
精密板金 wiz におけるアルミ板金部品も加工素材として用いるアルミ板は、特に指定などない限り、この A5052P を通常は、1×2メーター板の定尺板からカットして利用しています。
- A5052P(◎)
- 板厚 : t0.5~t3.0
一般板金用のアルミ板。アルミ板の板金材料と言えば、通常はこの”A5052P”であり、調質(質別記号)が H34(1/2硬質)のものを使用する。
参考JIS規格 : JIS H 4000 - A1050P(×)
- 板厚 : t0.3~t3.0
アルミ(Al)の純度99.5%以上の1000系の純アルミ板。純アルミニウムであるので、成形性、溶接性、耐食性、表面処理性は良いがA5052Pと比較すると強度は劣る。
参考JIS規格 : JIS H 4000 - A1100P(△)
- 板厚 : t1.0~t3.0
A1050Pと同様、1000系の純アルミ板でアルミ(Al)の純度99.0%以上。主に建材用などに用いられる。
参考JIS規格 : JIS H 4000 - A2017P(×)
- 板厚 : t1.0~t3.0
”17S”とも言われ、旧呼称ではジュラルミンとも呼ばれる。耐食性・溶接性に劣るが、強度が高く切削加工性も良い。厚板で主に機械加工用。(曲げ加工を伴う板金材料には使用しない。)
参考JIS規格 : JIS H 4000 - A2024P(×)
- 板厚 : t3.0~
”24S”とも言われ、旧呼称では超ジュラルミンとも呼ばれる。A2017Sよりさらに強度が高く切削加工性が良い。厚板で主に機械加工用。(曲げ加工を伴う板金材料には使用しない。)
参考JIS規格 : JIS H 4000 - A5083P(×)
- 板厚 : t3.0~
非熱処理型合金の中で最高の強度があり、耐食性、溶接性がよい。溶接構造用や機械部品用。(曲げ加工を伴う板金材料には使用しない。)
参考JIS規格 : JIS H 4000 - A6061P(×)
- 板厚 : t3.0~
”61S”とも言われ、熱処理型の耐食性合金。(曲げ加工を伴う板金材料には使用しない。)
参考JIS規格 : JIS H 4000 - A7075P(×)
- 板厚 : t4.0~
”75S”とも言われ、アルミニウム合金の中で最高の強度をもつ合金の一つ。耐食性には劣る。(曲げ加工を伴う板金材料には使用しない。)
参考JIS規格 : JIS H 4000 - 参考:アルミニウム種類・分類
- ・1000系:純アルミニウム(非熱処理型合金:展伸材) :1050、1100 など
・2000系合金:Al-Cu-Mg系合金(熱処理型合金:展伸材) :2017、2024 など
・3000系合金:Al-Mn系合金(非熱処理型合金:展伸材) :3003、3004 など
・4000系合金:Al-Si系合金(非熱処理型合金:展伸材) :4032、4043 など
・5000系合金:Al-Mg系合金(非熱処理型合金:展伸材) :5052、5083 など
・6000系合金:Al-Mg-Si系合金(熱処理型合金:展伸材) :6061、6063 など
・7000系合金:Al-Zn-Mg系合金(熱処理型合金:展伸材) :7075、7N01 など
銅板(純銅)
純銅は、銅(Cu)を99.9%以上含有する不純物が少く純度の高い銅として、板金加工・精密板金分野においては電極などの電気部品、電子部品に広く用いられる材料です。
銅には、電気や熱を良く通し(電気伝導率・熱伝導度が高い)、伸延性、圧延性が良好、優れた耐食性を持つ、多彩で美しい色調をもつ、めっき性・はんだ付性が良い、良好なバネ特性をもつ、非磁性体であるなどの優れた特徴がたくさんあります。
板材としては、タフピッチ銅(C1100P)や無酸素銅(C1020P)がよく利用されます。
通常は、365mm×1200mmサイズの小板(コイタ)からカットして利用しています。
- C1100P タフピッチ銅板(△)
- 板厚 : t0.1~t3.0
酸化銅(I)[Cu2O](注1)の状態で酸素を0.02~0.05%含む銅 99.90%以上の高純度銅の非鉄金属。導電性・熱伝導性に優れ、展延性・絞り加工性・耐食性・耐候性がよい。電気・熱の伝導性に優れるが、還元性雰囲気中で高温加熱すると水素ぜい化を起こす場合がある。
参考JIS規格 : JIS H 3100 - C1020P 無酸素銅板(△)
- 板厚 : t0.3~t3.0
酸化銅(I)[Cu2O](注1)や残留脱酸剤を含まない銅 99.96%以上の高純度銅の非鉄金属。導電性・熱伝導性・展延性・絞り加工性に優れ、溶接性・耐食性・耐候性がよい。還元性雰囲気中で高温に加熱しても水素ぜい化を起こすおそれがない。タフピッチ銅と比較すると、より抵抗や歪みが少なく工業的に優れている純銅。
参考JIS規格 : JIS H 3100 - C1201P・C1220P・C1221P りん脱酸銅板(△)
- 板厚 : t0.1~t3.0
りんによって脱酸(注2)され、酸化銅(I)[Cu2O](注1)を含まない銅 99.90%以上の高純度銅の非鉄金属。残留りん量によって高りん脱酸銅と低りん脱酸銅とがある。高りん脱酸銅は、水素ぜい化の心配はないが、導電性が低下する。低りん脱酸銅は、導電性の低下は少ないが、条件によっては水素ぜい化のおそれもある。展延性・絞り加工性・溶接性・耐食性・耐候性・熱伝導性がよい。通常、市中品として流通するものは、C1220P が一般的。
参考JIS規格 : JIS H 3100
(注1)
酸化銅とは、銅及び高銅合金などを、酸化雰囲気中で加熱する際に表面に生成する銅と酸素の化合物のこと。酸化銅(Ⅱ)[CuO]、酸化銅(Ⅰ)[Cu2O]の2種類があり、酸化銅(Ⅱ)は最表層部に生成し、黒色を呈し、酸化銅(Ⅰ)は前者の下層部に生成し、赤褐色を呈す。
(注2)
脱酸とは、金属又は合金の溶湯中の酸素を除去する処理のこと。りん、マンガンなどが脱酸剤として用いられる。
真鍮板(黄銅)
真鍮とは、銅を主成分(59.0~71.5%)とする亜鉛(元素記号:Zn)との銅合金で、特に亜鉛が20%以上のものをいい、一般には黄銅(おうどう:英文では”brass”又は”copper-zinc alloys”)と言われる伸銅品の一種です。
真鍮板(黄銅板)には、添加する亜鉛Znの成分量の多い少ないによっていくつか種類があり、以下の真鍮板がありますが、板金材料としては C2801P が一般的で、特に断りがなければ通常はこれを使用します。通常は、365mm×1200mmサイズの小板(コイタ)からカットして利用しています。
- C2801P 真鍮板(◎)
- 板厚 : t0.1~t3.0
黄銅板3種板(旧JIS記号:BSP3)とも言われ、比重(密度)8.43。銅が約60%、亜鉛が約40%であることから、「六四黄銅」、「60/40黄銅」などと呼ばれる場合もある。強度が高く、展延性がある材料で、一般板金用として広く用いられ、市中品の真鍮板として最も一般的に流通する板金材料。打ち抜いたまま又は折り曲げて使用する配線器具部品、ネームプレート、計器板などに用いられる。
参考JIS規格 : JIS H 3100 - C2600P 真鍮板(×)
- 板厚 : -(市中材としての流通板厚不明)
黄銅板1種板(旧JIS記号:BSP1)とも言われ、比重(密度)8.56。銅が約70%、亜鉛が約30%であることから、「七三黄銅」、「70/30黄銅」或いはイエローブラスなどと呼ばれる場合もある。展延性・絞り加工性に優れ、めっき性がよい材料。端子コネクタ、自動車ラジエター、カメラなどに用いられる。
参考JIS規格 : JIS H 3100 - C2680P 真鍮板(×)
- 板厚 : -(市中材としての流通板厚不明)
黄銅板2種板(旧JIS記号:BSP2)とも言われ、比重(密度)8.47。銅が約65%、亜鉛が約35%であることから、「65/35黄銅」などと呼ばれる場合もある。展延性・絞り加工性・めっき性がよい材料。スナップボタン、カメラ、まほう瓶などの絞り用、端子コネクタ、配線器具、機械部品などに用いられる。
参考JIS規格 : JIS H 3100
りん青銅・バネ用リン青銅板
りん青銅とは、銅(Cu)を主成分とするスズ(元素記号:Sn)との銅合金である青銅(せいどう:英文では”bronze”、ブロンズ、砲金ともいう)に分類される銅合金です。
C5050P、C5071P、C5111P、C5102P、C5191Pなどの材料記号で表されるリン青銅板がありますが、C5191Pが最もよく利用され、りん青銅板(リン青銅板)の板金材料・薄板バネ加工材料と言えば、特に断りがなければ通常はこれを使用します。
よりバネ性の強い C5210P(バネ用りん青銅板)もよく利用されます。
通常は、180mm×1200mmサイズの小板(コイタ)からカットして利用しています。
- C5191P りん青銅板(◎)
- 板厚 : t0.1~t3.0
りん青銅板2種(旧JIS記号:PBP2)とも言われ、比重(密度)8.89。一般に展延性・耐疲労性・耐食性が良好であるほか、高強度、曲げ・絞り加工性が良い、耐摩耗性が良い、非磁性体、めっき・はんだ付が容易、化学的腐食に強いなどの特性をもつ銅合金。主な用途例には、電子、電気機器用ばね、スイッチ、リードフレーム、リード端子、トランジスタ端子、コネクタ、ダイヤフラム、ベロー、各種リレー接片、ヒューズグリップ、しゅう動片軸受、ブッシュ、クラッチ板、ブレード材、各種スプリング片、打楽器などがある。
参考JIS規格 : JIS H 3110 - C5210P ばね用りん青銅板(◎)
- 板厚 : t0.1~t3.0
旧JIS記号では PBSP で表され、比重(密度)8.89。りん青銅板(C5191P)と同様、展延性・耐疲労性・耐食性が良好であるほか、高強度、曲げ・絞り加工性が良い、耐摩耗性が良い、非磁性体、めっき・はんだ付が容易、化学的腐食に強いなどの特性をもつ銅合金。バネ用材料として、バネ限界値が規定されているリン青銅板。高性能バネ材に適し、りん青銅板(C5191P)よりもさらに高性能のばね性が要求されるものに用いられる。
参考JIS規格 : JIS H 3130
ベリリウム銅板
ベリリウム銅とは、銅合金の一種であり、銅(元素記号:Cu)を主成分とし、ベリリウム(Be)0.4~2.2%と少量のコバルト(Co)、ニッケル(Ni)及び鉄(Fe)を添加した析出硬化形(過飽和固溶体から金属間化合物などの異相が析出することによって起こる硬化)の高銅合金です。
C1720P(ばね用ベリリウム銅板)がよく利用され、精密板金、薄板バネ加工分野においては、”ベリ銅”などとも呼ばれ、コネクタ、高性能バネ、電気機器用薄板バネ部品などによく用いられます。
通常は、200mm×1200mmサイズの小板(コイタ)からカットして利用しています。
- C1720P ばね用ベリリウム銅板(△)
- 板厚 : t0.05~t1.0
ばね用ベリリウム銅板2種(旧JIS記号:BeCuP2)とも言われ、比重(密度)8.36(時硬前:8.26)。耐食性がよく、時効硬化処理前には展延性に富み、時効硬化処理後は、耐疲労性・導電性が増加する。ミルハードン材を除き、時効硬化処理は成形加工後に行わる。メーカーにより多少呼称は異なるが、”25合金”や”アロイ25”などと呼ばれるベリリウム銅が、C1720P の相当品。25合金(アロイ25)は、ベリリウム銅板の中では最も一般的であり、銅をベースとした商業用の合金(銅合金)の中で最高の強度と硬さをもっている高強度合金。
参考JIS規格 : JIS H 3130 - C1700P ばね用ベリリウム銅板(×)
- 板厚 : -(市中材としての流通板厚不明)
ばね用ベリリウム銅板1種(旧JIS記号:BeCuP1)とも言われ、比重(密度)8.41(時硬前:8.26)。C1720P(25合金)と同じような特性及び用途だが、C1720P よりもベリリウム(Be)含有量が少なく、多少強度が劣ってもよい場合などに代用される材料。メーカーにより多少呼称は異なるが、”165合金”や”アロイ165”などと呼ばれるベリリウム銅が、C1700P の相当品。
参考JIS規格 : JIS H 3130
バネ用炭素鋼帯(ばね用冷間圧延鋼帯)
バネ用炭素鋼帯(ばね用冷間圧延鋼帯)と呼ばれるものには、みがき特殊帯鋼と、これに熱処理を施したもので、”焼入れリボン鋼(QSK)”又は”リボン鋼”という名でも知られている焼入れ鋼帯(焼入鋼帯)、及びベイナイト鋼帯の三つの種類があります。
通常は、3mm~102mm幅程度(板厚により異なる)のコイル材からカットして利用しています。
- みがき特殊帯鋼(△)
- 板厚 : t0.1~t1.0
一般に特殊鋼の冷間圧延材を言う。製造方法として、熱間圧延後に冷間圧延を行い冷間圧延のままとしたものか、冷間圧延後に焼なまし(焼鈍)を施したものとがある。JIS規格においては、JIS G 3311(みがき特殊帯鋼)に規定があり、鋼種として、炭素鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼、クロム鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロムモリブデン鋼、ばね鋼、マンガン鋼があり、38種類の鋼種記号が規定されている。
参考JIS規格 : JIS G 3311 - 焼入れリボン鋼(SK焼入鋼帯:QSK)(△)
- 板厚 : t0.1~t1.0
みがき特殊帯鋼を素材とし、それに焼入れ焼戻しを施して製造したもので、QSKの記号で呼ばれる場合がある(QSK-5など)。素材として既に焼入れされたものであり、薄板バネとしての強度は既に備えているため、成形・加工後の部品に対する熱処理は不要。焼入れ材であるため、成形性には乏しく、曲げ加工の不要な平板・抜き加工のみの製品、あるいは軽度の曲げ加工で成形可能な薄板ばねなどに適する。
参考JIS規格 : JIS G 4802 - ベイナイト鋼帯(ベーナイト鋼帯)(△)
- 板厚 : t0.1~t1.0
みがき特殊帯鋼を素材とし、それに熱処理としてオーステンパー処理を施して製造したもの。その呼び名は、ベイナイト(ベーナイト)という母材の金属組織に由来する。焼入れ鋼帯(焼入れリボン鋼)と同様に成形・加工後の部品に対する熱処理は不要。強さとしなやかさを併せ持つ材料で、焼入れリボン鋼に比較して靭性(じん性)に優れ、ある程度の成形性があり、従来の焼入鋼帯では難しかった曲げ加工や軽度の絞り加工が可能であるため、各種の成型ばねにも用いられる。
参考JIS規格 : JIS G 4802
注記).
上に挙げた薄板金属材料・板金材料の在庫状況は、(◎)、(△)、(×)の記号を参考にしてください。
ご注文の板金加工部品が在庫にない材料・板厚を使用する場合は、対応可能なものであれば別途材料を調達して加工するか、お客様から材料支給いただいて加工いたします。
ただし、在庫していない材質・板厚の加工の場合は、定尺材料を購入しての加工になるため、製作数量が少量ですとコストがかなり割高になる場合があります。
薄板金属材料・板金材料のJIS規格
- JIS G 3141
- 冷間圧延鋼板及び鋼帯
参考英語:Cold-reduced carbon steel sheets and strips - JIS G 3131
- 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯
参考英語:Hot-rolled mild steel plates,sheets and strips - JIS G 3313
- 電気亜鉛めっき鋼板及び鋼帯
参考英語:Electrolytic zinc-coated steel sheets and coils - JIS G 3302
- 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯
参考英語:Hot-dip zinc-coated steel sheets and coils - JIS G 3101
- 一般構造用圧延鋼材
参考英語:Rolled steels for general structure - JIS G 4305
- 冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯
参考英語:Cold rolled stainless steel plates, sheets and strip - JIS G 4313
- ばね用ステンレス鋼帯
参考英語:Cold rolled stainless steel strip for springs - JIS H 4000
- アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条
参考英語:Aluminium and aluminium alloy sheets and plates, strips and coiled sheets - JIS H 3100
- 銅及び銅合金の板並びに条
参考英語:Copper and copper alloy sheets, plates and strips - JIS H 3110
- りん青銅及び洋白の板並びに条
参考英語:Phosphor bronze and nickel silver sheets, plates and strips - JIS H 3130
- ばね用ベリリウム銅、チタン銅、りん青銅、ニッケル-すず銅及び洋白の板並びに条
参考英語:Copper beryllium alloy, copper titanium alloy, Phosphor bronze and nickel silver sheets, plates and strips for springs - JIS G 3311
- みがき特殊帯鋼
参考英語:Cold rolled special steel strip - JIS G 4802
- ばね用冷間圧延鋼帯
参考英語:Cold-rolled steel strips for springs
板バネなどに利用できるバネ性のある薄板ばね材料
上に挙げた薄板金属材料・板金材料のうち、次の材料は、板バネ部品やシム板、薄板エッチング材など、バネ性を要する部品や板ばね加工品、薄くて硬さを要する板部品などの材料として利用することができます。
ばね性のある薄板ばね材料
- ステンレスばね材(SUSバネ材):SUS304CSP、SUS301CSP 等
- りん青銅板:C5191P
- ばね用りん青銅板:C5210P
- ばね用ベリリウム銅板:C1720P
- みがき特殊帯鋼(SK材):SK85M(SK5M)等
- 焼入れリボン鋼(SK焼入鋼帯):QSK-5 等
- ベイナイト鋼帯(ベーナイト鋼帯):NBS**、BT**、B-** 等
対応可能な薄板金属加工技術・板金加工方法
上に挙げた様々な薄板金属材料・板金材料を加工するためには、一般に、それぞれの材料・材質及び板厚に適した加工方法を選択する必要があります。
(例えば、銅板はレーザー加工に向かない、t0.1程度の薄板の加工は、通常のタレパンでは抜き加工できない、など。)
さらに、最適な加工方法は、加工材質・材料及び板厚の違いだけでなく、製品形状(曲げ形状・穴形状)、要求品質(加工精度・寸法公差)、製作コスト、1ロット製作数量及び納期など、その製品に求められるさまざまな情報から総合的に判断する必要があります。
精密板金 wiz では、豊富な経験・知識をベースに、最も最適な加工方法をスピーディーに選択し、より良い板金加工・金属加工製品を実現するために、次のような薄板金属加工技術・板金加工方法に対応します。(必要であれば外作による加工でも対応します。)
エッチング加工(フォトエッチング加工)
少量から数量中程度製作時の薄板金属の高精度・精密なブランク加工に有用。NCTタレパン・レーザーカット・ワイヤーカットなどの機械的・電気的な加工とは異なり、エッチング液による化学反応・腐食作用を応用して被加工物を食刻(溶解加工・化学切削)する薄板加工方法。素材材料の板厚が薄いほどシャープで高精度・精密加工が可能、腐食による溶解加工であるため材料変形の心配がない、複雑かつ任意形状の穴や溝の精密加工をはじめ、凹凸加工(ハーフエッチング)もできるなどの特徴がある。イニシャル費用としてエッチングパターン(原版)の製作費用が必ず必要なので、少量製作では費用は割高となる。
詳しく >> エッチング加工(フォトエッチング加工)
タレパン加工(NCT、タレットパンチプレス)
数量中程度製作時の薄板金属のブランク加工(外形追い抜きや穴の抜き加工)に有用。アルミ・真鍮・銅などは板厚t3.0まで、鋼板(鉄板 SPCC や SECCボンデ鋼板・SGCC等処理鋼板)はt3.2、ステンレス(SUS304等)なら板厚t1.5程度までは効率良い加工ができる。あまり薄い板厚(t0.5程度以下)の場合は、抜き加工時のカス上がりが多くなり効率が落ちる。
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レーザー加工(レーザーカット)
タレパンと同様、数量中程度製作時のブランク加工に有用だが、条件が同じ製作物で比較するとタレパンよりも若干コスト高になる傾向がある。被加工材質やレーザー加工機の性能などによっても異なるが、概ねタレパンよりも厚板のカットができ、外形ラインに曲線を持つ製品などは追い抜きが必要なタレパンよりも滑らかな切断面が得られる。クリーンカットにも対応。カットだけでなく材料表面に文字やデザインなどの彫刻(レーザーマーキング)も可能。レーザー光線の熱エネルギーを利用した加工方法であることから、レーザー光の反射率が高い銅板などは加工が困難。
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ワイヤー加工(ワイヤーカット)
高精度・精密加工を要するブランク加工に有用。試作や少量製作向きであり、加工時間が長く、数量中程度以上の製作にはコスト的にも向かず、加工サイズも大きなものには対応できないが、NCTタレパンやレーザーカットでは対応できない精密・高精度の加工が可能。工作物と電極との間の放電現象を利用して行う加工なので、電気を通す材質・材料であれば加工できる。通常はワイヤ線径φ0.25程度の電極を使用し、最大加工サイズは160mm×260mm程度まで。
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シャーリング加工(シャーリングカット)
板材(定尺板材料)の切り出しに有用。板金材料を所要寸法へ直線に切断加工するのに非常に便利な加工方法。原理としては紙などを切るハサミと同じであり、上下の刃のせん断力により板材を切断する。
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金型プレス加工
基本的に量産加工向き。専用金型(抜き型)を製作して行う薄板のブランク加工では、エッチングやワイヤーカットに劣らない高い寸法精度のプレス抜き加工が可能な上、製品単価も最も低コストである反面、専用金型のイニシャル費用が大きいので、少量製作には向かない。プレス抜き・プレス曲げ成形を一連の工程で加工できる順送型(じゅんそうがた)では、金型の設計から製作までさらに多くのイニシャル費用が必要となる。
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曲げ(ベンディング)
板金加工・精密板金においては最も重要な加工工程の一つ。上型と下型の上下二箇所の金型にセットした金属材料(板材)プレスすることによって板材を折り曲げる加工。このような曲げ加工を行う機械を、一般にベンディングマシン(プレスブレーキ)という。ベンディングマシンにより行う曲げ加工は、ベンダー曲げとも言われる。位置決めを精度良く行い、プレス加圧力を制御することで高精度な曲げ加工が行えるサーボベンダーもある。
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表面処理
焼付け塗装からシルク印刷、ユニクロ・ニッケル・クロメート・クロームメッキ等各種めっき加工、アルミ材料へのアルマイト処理や電解研磨・化学研磨、精密鏡面研磨加工など、さまざまな金属表面処理がある。
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関連情報・参考ページ
- お見積もり・お問合わせ
- 精密板金・板金加工などのお見積もりのご依頼方法(必要事項、送付いただく図面形式など)、お問い合わせ先、担当者、営業日など。
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- 精密板金・板金加工の詳しい解説。自動車板金・建築板金との違い、製作実例、薄板金属への主な加工内容・工程、板金材料・材質・板厚の説明など。
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- 薄板バネ・薄板板金のブランク加工にも利用され、薄板金属の精密加工に有用なフォトレジストエッチング加工について。
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- 精密板金 wiz における製品実績・加工サンプルのご紹介。板金加工品・板バネ製品だけでなく、機械加工による金属加工部品も多数あり。
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- お客様から寄せられたよくある質問とその回答集。