薄板精密板金加工のよろずや-精密板金 wiz(ウィズ)produced by (有)長井技研

エッチング加工(フォトエッチング加工)について

薄板板金のブランク加工への適用リードフレームの製造などに広く利用され、薄板の金属加工・薄板金属の精密加工方法として非常に有用なエッチング加工(フォトエッチング加工、フォトレジストエッチング加工)技術についてご説明しております。

精密板金 wiz における精密板金・板金加工では、製品の加工精度や要求品質などに応じて最適な加工方法を採用しています。

特に、精密板バネや薄板メッシュ・高い寸法精度が要求される多孔板、レーザー加工では寸法精度が不足するような製品、反り・ひずみ・たわみなど材料変形を嫌うような部品のブランク加工には、エッチング加工(フォトエッチング加工)を採用して薄板金属の精密加工、精密板金加工をお請けしております。

薄板金属のフォトレジストエッチングによる精密加工サンプル
【エッチング加工(フォトエッチング加工)のサンプル】


エッチングとは、フォトエッチング加工とは


エッチングとは

エッチングとは、抜き加工などの機械的せん断・切断とは異なり、一般にエッチング液などの化学薬品による化学反応・腐食作用を応用して被加工物を食刻(溶解加工・化学切削)する加工方法です。

エッチング加工では、目的とする加工形状にマスキング(塗装処理のマスキングと同じように表面を部分的に被覆保護すること)による防食処理を施したうで、エッチング液などの腐食剤によって不要部分を除去することで目的の加工形状を得ます。

エッチング加工は、基本的に腐食性のあるものであればさまざまな素材の加工・表面加工に応用することができます。
身近なものでは、ガラス工芸やガラスの装飾技法として利用されるガラスエッチングなどがあります。

各種鋼材やステンレス、銅や真鍮などの伸銅品などの金属加工においては、薄板金属の精密加工として非常に優れた手法であり、精密板金・板金加工にも応用されます。
精密板金 wiz でも、薄板精密板金加工における高い寸法精度・精密加工が必要とされる製品のブランク加工方法としてよく利用しています。


フォトエッチングとは

フォトエッチング加工とは、上述のようなエッチング加工技術に、フォト(photo)、つまり精密な写真技術・精密画像技術をマッチさせた精密加工技術です。

フォトエッチング加工では、エッチング液による腐食加工(化学切削・溶解加工)から加工材料表面を保護するマスクとして、一般にレジスト(フォトレジスト・エッチングレジスト)が用いられます。
このことから、フォトレジストエッチング加工とも言われます。

フォトエッチング加工は、精密写真と腐食技術の応用することにより、エレクトロニクス製品などにおける極小部品・極薄板製品や特殊・複雑形状の製品など、薄板金属加工における超精密な加工要求・精度にも対応が可能な加工方法です。

フォトエッチング加工(フォトレジストエッチング加工)においては、CAD/CAMシステムにより作成されたデータを元にしてレーザプロッターから高精度の描画パターン(エッチングの原版であるフィルムマスク)を作成することにより、非常に精密な目的形状のマスク(マスキング)を施すことができます。

フォトエッチング加工では、このようにして得られる非常に高精度のエッチングパターンに対してエッチング液を用いて腐食加工を施すことにより、極小品・極薄板品、そして任意形状・複雑形状の精密金属加工が可能となります。

フォトレジストエッチング加工による精密加工


エッチング加工(フォトエッチング)の特徴

フォトエッチング技術における優れた利点・特徴などをご説明します。


任意形状の加工ができる

フォトエッチングでは、写真画像として取り込めるものがあればエッチングパターンを作成できます。
そのため、数値化されたCADデータでなくとも、任意形状の加工ができます。
例えば、イラストスやデザインスケッチ画などもスキャニングにより画像として取り込むことによって、そのままの形状を再現することができます。


コストの高い金型・治具等が不要

プレス加工における金型に相当するものとして、フォトエッチングではフィルムマスクを原版に使用します。プレス加工では汎用金型では対応できない特殊・複雑形状のプレス抜きの場合は専用の金型製作が必要になり、金型製作コストが非常に高価になります。
しかし、フォトエッチングではフィルムマスクは一般的な金型と比べても安価であるうえに、短時間に作成することができます。
また、プレス加工における金型に相当するフィルムマスクは、変更も容易でスピーディーな対応が可能なことから試作品などの小ロット品をプレス加工よりも短納期で提供できます。


材料が薄板であるほど高精度加工ができる

フォトエッチングは化学的な腐食を加工のベースとしていることから、エッチング加工を施す素材材料の厚さ(板厚)が薄ければ薄いほどシャープで高精度な加工ができ、薄板金属の精密加工に適しています。


バリ・カエリ・ひずみ・たわみ等 材料変形の心配がない

化学反応・腐食による溶解加工は、非接触加工であるため、フォトエッチング加工においては、プレス金型加工(プレス打抜き加工)に懸念されるような抜き・せん断加工時のバリ・カエリ・ひずみ・たわみなどが原理的に発生しません。


超精密・高密度・複雑・微細加工ができる

フォトエッチングにおけるエッチングパターン(原版)は、CAD/CAMデータとレーザープロッタを用いた精密写真技術によるフィルムマスクにより作成されます。
そのため、微細で複雑かつ精密な形状や微細貫通加工を高密度で行うことができます。


複雑な穴形状、深さ調整も可能な溝加工・凹凸加工ができる

フォトエッチングでは、板厚の半分だけを残して腐食加工するような凹凸の加工や溝加工を行うこともできます。
これは、エッチングの最大の特徴の一つであり、一般にハーフ加工とも言われるハーフエッチング(※)を行うことにより可能です。
ハーフエッチングでは、腐食の度合いを制御することにより凹凸の深さを調節することも可能です。


(※)ハーフエッチングとは

ハーフエッチングとは、ハーフ加工とも言われ、フォトエッチングにおいて、素材(金属)板の両面から同一パターン形状を化学腐食させエッチングするのではなく、意図的にそれぞれの面のエッチングバランスを制御することによって任意の形状に溶解加工したり(下図のその1:異形パターン例参照)、素材の片面(片側)だけを厚みの途中までエッチングする(下図のその2:片面エッチング加工参照)ようなエッチング加工のことです。

ハーフエッチング加工の断面イメージ図(その1:異形パターン例)
【ハーフエッチング加工の断面イメージ図(その1:異形パターン例)】

ハーフエッチング加工の断面イメージ図(その2:片面エッチング加工)
【ハーフエッチング加工の断面イメージ図(その2:片面エッチング加工)】

穴径φ0.1mm、穴深さ0.05mm、穴ピッチ0.3mmのハーフエッチング(ハーフ加工)実例
【ハーフエッチング加工例:穴径φ0.1mm、穴深さ0.05mm、穴ピッチ0.3mmの穴のハーフ加工】


フォトエッチングの加工工程・主な装置・設備

フォトエッチング加工の主な工程や加工方法のイメージなどを、イラストをまじえてご説明いたします。


1.原版(エッチングパターン)の描画・作成

お客様から頂いた図面やCADデータなどの情報をCADシステムに入力し、レーザープロッタの出力により高精度のパターンフィルム原版を作成します。
エッチングパターンフィルム原版は製品の寸法管理や仕上がり、品質を左右する要になります。
エッチングパターン(原版)のイメージ図
【エッチングパターン(原版)のイメージ図】


2.材料の前処理(脱脂洗浄・整面)

次工程で行うレジスト(フォトレジスト)を材料表面へ塗布する際に、材料への密着をよくするために金属板材料表面の汚れや油脂の付着を除去する脱脂洗浄処理を行います。
材料表面の洗浄が不完全だとフォトレジストの密着強度や品質・仕上がりにも影響を与えるため、重要な工程です。
材料の前処理(脱脂洗浄・整面)のイメージ図(断面図)
【材料の前処理(脱脂洗浄・整面)のイメージ図(断面図)】


3.ラミネート(フォトレジストの塗布)

フォトレジスト(レジスト)を金属板材料の両面に貼り付けます。
このフォトレジストによりマスキング(保護)された部分はエッチングされません。
フォトレジストとは耐酸性のある感光剤のことで、後工程のエッチング処理から金属材料表面を保護することから”レジスト”(resist)と呼ばれています。
フォトレジスト塗布の断面イメージ図
【フォトレジスト塗布の断面イメージ図(ラミネート)】


4.露光

エッチングパターンフィルム原版に描画された形状を、フォトレジストによってコーティングされた金属板の表裏両面に露光することで焼き付けを行います。
一般には、より精密なパターン(形状)を再現するために、露光はクリーンルーム内での作業が必要とされます。
露光の断面イメージ図
【露光の断面イメージ図】


5.現像

エッチングパターンフィルム原版のパターン(形状)が露光転写された金属材料に現像処理を行います。
この現像処理を行うことによって、バターン部のレジストが除去され、その部分の金属板表面が露出されます。
これで次工程で行うエッチングパターンのマスキングが完成します。
現像の出来映えは次のエッチングの仕上がりに大きく影響するため、非常に重要な工程となります。
現像の断面イメージ図
【現像の断面イメージ図(バターン部のレジスト除去)】


6.エッチング

マスキングされた金属板材料にエッチング液を付けます。
このとき、現像作業によって露出された部分だけがエッチング(化学切削・腐食・溶解除去)されることによって、パターン(原版)通りの形状に金属板が除去加工されます。
エッチングの断面イメージ図
【エッチングの断面イメージ図(エッチング液による金属腐食・化学切削)】


7.レジスト剥離(はく離)

エッチング加工後に金属板表面に残っているフォトレジストによるマスキングを取り除き、洗浄・乾燥を行います。
レジスト剥離の断面イメージ図
【残存するレジストが剥離される断面イメージ図】


8.製品検査

外観検査・寸法検査などの検査行い、製品完成となります。
製品完成の断面イメージ図
【製品完成の断面イメージ図】


フォトエッチング加工の主な設備・装置

上記のフォトエッチング加工工程において、一般に用いられる設備・装置には次のようなものがあります。

  • CAD/CAMシステム
  • レーザープロッター
  • 金属切断装置
  • 金属洗浄機
  • 自動現像機
  • エッチング前処理ライン
  • レジストコーター
  • ラミネーター
  • 露光・現像ライン
  • エッチャー(エッチングマシン)
  • 画像測定機
  • 投影機

エッチング加工(フォトエッチング)の標準加工精度・寸法公差

エッチング加工(フォトエッチング)の最小パターン・最小開口寸法・加工精度などは、エッチングの性質上、加工する金属素材板の厚み(板厚)に大きく左右されます。
エッチングにおける板厚との関係や、エッチング加工の標準的な加工精度、一般的な寸法公差などについてご説明します。


エッチング加工断面形状と金属板の板厚に対する関係

エッチング加工の性質上、アンダーカット(サイドエッチング)が必ず発生します。
エッチング加工の断面形状の拡大イメージは以下のイメージ図のようになります。

(a)片面エッチング(ハーフエッチング)の場合

片面エッチング(ハーフエッチング)の場合は、サイドエッチングが大きくなり、下図のようなテーパーがつき、次の(b)両面エッチングの場合よりも寸法精度は劣ります。
サイドエッチングA寸法の大きさは、一般には、金属板の板厚tの約40%程度となります。

(a)片面エッチング(ハーフエッチング)の場合の断面形状と金属板の厚さ(板厚)に対する関係のイメージ図

(b)両面エッチングの場合

両面エッチングの場合は、板の両側からの腐食加工になるためテーパーが縮小されて、A寸法は小さくなります。
サイドエッチングA寸法の大きさは、一般には、金属板の板厚tの約10%~20%以内となります。

(b)両面エッチングの場合の断面形状と金属板の厚さ(板厚)に対する関係のイメージ図

上記(a)、(b)いずれの場合においても、サイドエッチングの大きさ(上図の寸法A)は、金属板の厚さ(板厚)に大きく依存します。
板厚が薄いほどサイドエッチングは小さくなると共に、加工精度も向上します。


コーナーの形状・コーナー外角(r)・内角(R)の仕上がり寸法

エッチング加工では、四角穴などの内角R や、製品外形の外角r には、必ず一定以上の丸みを帯びます。この内角R と外角r の半径アール寸法も金属板の素材厚さ(板厚)に依存します。
通常は、内角(R)よりも外角(r)のほうが鋭くエッチングされます。
一般には、以下の図のように、板厚にもよりますが、内角(R)は、板厚tの80%~120%程度、外角(r)は板厚tの40%~80%程度となります。

コーナーの形状・コーナー外角(R)・内角(r)寸法のイメージ図


最小加工寸法と寸法公差

エッチング加工による穴の大きさ・線幅(最小残し幅)と金属板の厚み(板厚)に対する関係は、次の図のようになります。

最小穴径(最小加工寸法)・最小線幅(最小残し幅)と金属板の板厚に対する関係のイメージ図

【最小穴径(D)・最小線幅(W)と金属板の板厚に対する関係のイメージ図】

通常は、穴径は板厚より小さくすることはできません。
一般には板厚tの110%程度が最小穴径(最小加工寸法)となります。
線幅(残し幅)の最小寸法は、板厚tの50%~100%程度となります。
また、寸法公差は、板厚tの ±10%~15%程度となりますが、いずれの場合もその程度は板厚により若干異なります。
具体的には次の表1.に示すような最小加工寸法と寸法公差になります。

表1.金属板の板厚(t)に対する最小加工寸法(最小穴径)及び寸法公差
表1.金属板の板厚tに対する最小加工寸法(最小穴径)及び寸法公差


ピッチ公差(穴ピッチ寸法公差)

エッチング加工におけるピッチ公差(隣り合う穴と穴との距離寸法の公差)は、穴ピッチ寸法により、標準的には次の図のようになります。

ピッチ公差(穴ピッチ寸法公差)
【穴ピッチ寸法に対するピッチ公差】


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