板金材料の材質記号・種類
精密板金・板金加工や薄板バネ加工によく使われる主な板金材料は、鋼板(鉄板、電気亜鉛めっき鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板などのいわゆる表面処理鋼板)やステンレス鋼板に代表される鉄鋼材料と、アルミや伸銅品(純銅および銅合金の真鍮、りん青銅、ベリリウム銅など)に代表される非金属材料があります。
中でも最もよく使われる板金材料のトップ3は、鋼板(鉄板・表面処理鋼板)、ステンレス板、アルミ板ですが、そのほかにも、精密板金や板バネ加工によく使われる主な鋼板・板金材料にはどのような材質記号及び種類があるのか、以下でご紹介します。
SPCC・SPHC鋼板・SECCやSGCCなどの処理鋼板(鉄板)
SPCC みがき材(ミガキ材)-冷間圧延鋼板や、冷間圧延鋼板の表面に亜鉛めっき処理を施した処理鋼板である、SECC-電気亜鉛メッキ鋼板 や SGCC-溶融亜鉛メッキ鋼板 がよく利用されます。
主な鋼板、処理鋼板の種類には以下などがあります。
- SPCC(みがき材):冷間圧延鋼板
- SPHC(酸洗材):熱間圧延鋼板-酸洗材と黒皮(クロカワ)とがある
- SECC:電気亜鉛メッキ鋼板
(メーカー呼称:ボンデ鋼板、リバージンク、コーベジンク、スミジンク、ユニジンクなど) - SGCC:溶融亜鉛メッキ鋼板
(メーカー呼称:シルバージンク、リバーゼット、ガルバエース、タフジンク、バームジンク、ペンタイトなど) - SS材(SS400が代表的):一般構造用圧延鋼材(熱間圧延鋼板)
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ステンレス鋼板|SUS304-2B等
SUS304-2B(冷間圧延ステンレス鋼板)が最もよく利用され、ステンレス板の板金材料と言えば、特に断りがなければ通常はこれを使用します。
”2B”という記号はステンレス鋼板の表面処理記号(仕上がり別記号)の区分であり、適度なにぶい光沢を与える程度の軽い冷間圧延(調質圧延、スキンパスともいう)を施した冷間ブライト仕上です。
他の仕上げ記号のものには、BA仕上げ材、#400片面仕上げ材、HL仕上げ材(ヘアライン仕上げ)などの仕上げ材があります。
主なステンレス鋼板の種類には以下などがあります。
- SUS304:オーステナイト系ステンレス鋼板-最も用途広い、非磁性体
- SUS316:オーステナイト系ステンレス鋼板-SUS304よりさらに耐食性に優れる、非磁性体
- SUS430:フェライト系ステンレス鋼板-磁性体(磁石が着く)
詳細 >> ステンレス鋼板の種類・記号・規格・定尺サイズ・板厚等(近日UP)
ばね用ステンレス鋼帯(ステンレスばね材・SUSバネ材)|SUS304-CSP等
SUS304-CSP(ステンレスばね材・SUSバネ材)が最もよく利用され、ステンレス製の薄板バネ、薄板用エッチング材と言えば、特に断りがなければ通常はこれを使用します。
(精密板金 wiz における薄板ばね等の精密板金加工においても、通常この SUS304CSP を用いています。SUS301-CSP は、SUS304-CSP よりも更に硬さを求められるバネや特に要求のある場合に使用しています。)
- SUS304-CSP : オーステナイト系
- SUS301-CSP : オーステナイト系
- SUS420J2-CSP : マルテンサイト系
- SUS631-CSP : 析出硬化系
- SUS632J1-CSP : 析出硬化系
詳細 >> ステンレスばね材の種類・記号・規格・定尺サイズ・板厚等(近日UP)
アルミ板|A5052P等
A5052Pが最もよく利用され、アルミ板の板金材料と言えば、特に断りがなければ通常はこれを使用します。
A5052P は、一般板金用の板材として、「52S(ごーにーえす)」や、単に、「5052(ごーまるごーにー)」などとも呼ばれて幅広い分野で用いられているアルミ板です。
(精密板金 wiz におけるアルミ板製の精密板金・板金加工部品も、特に要求など無い限り、通常はほとんどがこの A5052P を利用しています。)
- 1050、1100 : 純アルミニウム(1000系)
- 2017、2024 : Al-Cu-Mg系合金(2000系合金)
- 3003、3004 : Al-Mn系合金(3000系合金)
- 4032、4043 : Al-Si系合金(4000系合金)
- 5052、5083 : Al-Mg系合金(5000系合金)
- 6061、6063 : Al-Mg-Si系合金(6000系合金)
- 7075、7N01 : Al-Zn-Mg系合金(7000系合金)
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銅板(純銅)|C1100Pタフピッチ銅・C1020P無酸素銅等
タフピッチ銅(C1100P)や無酸素銅(C1020P)がよく利用され、銅板(純銅)の板金材料・板材としては市中在庫も比較的豊富にあります。
純銅は、銅(Cu)を99.9%以上含有する不純物が少く純度の高い銅として、板金加工・精密板金分野においては電極などの電気部品に広く用いられる材料です。
- 無酸素銅板(C1020P):比重(密度)8.89/銅純度99.96%以上
- タフピッチ銅板(C1100P):比重(密度)8.89/銅純度99.90%以上
- りん脱酸銅板(C1201P・C1220P・C1221P):比重(密度)8.89/銅純度99.90%以上
詳細 >> 銅板(純銅)の種類・記号・規格・定尺サイズ・板厚等(近日UP)
真鍮板(黄銅)|C2801P等
C2801Pが最もよく利用され、真鍮板(黄銅板)の板金材料と言えば、特に断りがなければ通常はこれを使用します。
真鍮とは、銅を主成分(59.0~71.5%)とする亜鉛(元素記号:Zn)との銅合金で、特に亜鉛が20%以上のものをいい、一般には黄銅(おうどう:英文では”brass”又は”copper-zinc alloys”)と言われる伸銅品の一種です。
- C2600P : 黄銅板1種板(旧JIS記号:BSP1)/比重(密度)8.56
- C2680P : 黄銅板2種板(旧JIS記号:BSP2)/比重(密度)8.47
- C2801P : 黄銅板3種板(旧JIS記号:BSP3)/比重(密度)8.43
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りん青銅・バネ用リン青銅板|C5191P・C5210P等
C5191Pが最もよく利用され、りん青銅板(リン青銅板)の板金材料・薄板バネ加工材料と言えば、特に断りがなければ通常はこれを使用します。また、C5191Pよりもさらにバネ性が高いものには、C5210P(ばね用りん青銅板)もあり、薄板ばねやスイッチ部品などによく用いられます。
りん青銅とは、銅(Cu)を主成分とするスズ(元素記号:Sn)との銅合金である青銅(せいどう:英文では”bronze”、ブロンズ、砲金ともいう)に分類される銅合金です。
- C5191P りん青銅板 : りん青銅板2種(旧JIS記号:PBP2)/比重(密度)8.89)
- C5210P ばね用りん青銅板 : 旧JIS記号:PBSP/比重(密度)8.89
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ベリリウム銅板|C1720P等
C1720P(ばね用ベリリウム銅板)がよく利用され、精密板金、薄板バネ加工分野においては、”ベリ銅”などとも呼ばれ、コネクタ、高性能バネ、電気機器用薄板バネ部品などによく用いられます。
- C1720P ばね用ベリリウム銅板 : 旧JIS記号:BeCuP2/比重8.36(時硬前:8.26)
- C1700P ばね用ベリリウム銅板 : 旧JIS記号:BeCuP1/比重8.41(時硬前:8.26)
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バネ用炭素鋼帯(ばね用冷間圧延鋼帯)|SK-5(QSK-5)等
QSK-5 焼入れリボン鋼(SK焼入鋼帯)などがよく利用されます。
焼入れリボン鋼とは、薄板ばねやぜんまいバネなどによく使用されるバネ用炭素鋼帯の一種であり、冷間圧延によって製造される炭素鋼帯に熱処理(焼入れ焼戻し)を施して製造される焼入鋼帯です。
- QSK-5など : 焼入れリボン鋼(SK焼入鋼帯)
- みがき特殊帯鋼 : 特殊鋼の冷間圧延材
- ベーナイト鋼帯 : みがき特殊帯鋼にオーステンパー処理を施した炭素鋼帯
詳細 >> 焼入鋼帯(焼入れリボン鋼)の種類・記号・規格・定尺サイズ・板厚等(近日UP)
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