精密板金加工の主な加工工程(作業手順・流れ)
加工内容・製品により違いはもちろんありますが、一般的な板金加工・精密板金加工の主な加工工程・作業手順の概要をご説明いたします。
1.設計・図面展開
設計
板金部品図面の設計そのものは設計者はお客様である場合が多いですが、設計時点から加工のし易さ、コスト、必要精度などを設計に盛り込み、設計者の意図が加工者に伝わるような図面を描くことを心がけるべきです。
図面展開 ⇒ 展開図のイメージ
板金加工・精密板金の図面は基本的に第三角法で書かれているので、これを板金でどう実現するか、平板(平らな金属板)への展開図をイメージします。
平板部品(曲げ加工がない部品)はこの作業は必要ありません。
詳しく >> 精密板金加工部品の設計・図面展開
2.ブランク加工(展開図の加工-外形・穴加工)
展開図の形状、つまり、展開形状の通りに外形及び穴加工をします(ブランク加工と言います)。
ブランク加工は、加工材質・材料及び板厚、製品形状(穴形状など)、要求品質(加工精度・寸法公差)、製作コスト、1ロット製作数量及び納期などを総合的に考慮して最適な加工方法を選択します。
ブランク加工を行うための加工方法には主に次のような手法があります。
シャーリングカット(せん断加工・切断加工)
シャーリングによる板材の機械的切断加工(定尺板などから一定の幅・長さで必要なサイズに切断するせん断加工)やコンターマシン(バンドソー)によるのこ切断。
詳しく >> シャーリング加工(せん断加工)、コンターマシンカット(バンドソーカット)等
タレパン加工(NCT、タレットパンチプレス)
タレットパンチプレスによる穴加工及び外形形状の打抜き加工。NC制御で任意の金型により板材の所定の位置に連続的に打ち抜きする加工。
詳しく >> タレパン(NCT/NCタレットパンチプレス)加工
レーザー加工(レーザーカット)
レーザー加工機による穴及び外形形状のカット・切断加工や表面の彫刻(レーザーマーキング)など。レーザービームにより板材を加熱・溶融・蒸発・除去してカットする加工。
詳しく >> レーザー加工-カット(切断)・穴あけ・彫刻等
ワイヤー加工(ワイヤーカット)
ワイヤカット放電加工機による穴及び外形形状のカット精密加工。工作物とワイヤ電極との間の放電現象を利用して行うカット加工。
詳しく >> ワイヤーカット放電加工
エッチング(フォトエッチング)
エッチングによる薄板金属の穴及び外形形状の加工。精密な写真技術とエッチング技術をマッチさせて行う化学的腐食作用による加工。
詳しく >> フォトエッチング加工方法
金型プレス加工
金型による穴及び外形形状のプレス加工。専用金型を製作することにより、穴と外形を同時に打ち抜きする加工。
詳しく >> 金型プレス加工
3.前段加工(曲げ加工前の加工)
一つ前のブランク加工では、加工方法によっては切断面にバリが発生する場合もあるので、後工程と怪我防止の為にもこの時点でバリを取り除きます。
さらに、次の工程で行う曲げ加工後の加工が困難となる次のような加工も、基本的にはこの時点で行います。
タッピング・バーリングタップ加工
下穴にネジ(ビス)をねじ込むためのネジ山を切り込む加工。
詳しく >> タッピング・バーリングタップ加工(近日UP)
皿もみ加工(皿ざぐり加工)
皿ネジ(皿頭ねじ)を使用する際に、皿頭ネジの頭が沈むようにするための皿ザグリ穴の加工。
詳しく >> 皿もみ加工(皿ざぐり加工)(近日UP)
バリ取り
金属板の切断面や機械加工などにおいてできる鋭角で小さな不要な突起を除去するための加工。
詳しく >> バリ取り(近日UP)
4.曲げ加工(ベンディング)
前段加工まで済ませた展開図形状の平らな金属板(平板)を、折り曲げていく工程です。
プレスブレーキなどのベンダー(ベンディングマシン)により、ブランク加工をした平板材所定の位置を、適切な角度に折り曲げ成形していきますが、曲げ加工は板金加工・精密板金においては最も重要な加工工程の一つになります。
詳しく >> 曲げ加工(ベンディング)(近日UP)
5.溶接加工
曲げ加工により成形した金属板同士を接合し、組み立て成形する工程になります。
金属板の材質・板厚、組立形状(接合形状)などにあわせて適切な溶接方法(突合せ溶接、隅肉溶接、点付け溶接、スポット溶接など)により溶接を行います。
溶接も精密板金・板金加工においては、仕上がり品質に直結する重要な工程の一つですが、品質の良し悪しは溶接加工者の技量に左右される要素が大きい工程です。
詳しく >> 溶接加工(近日UP)
6.仕上げ加工
溶接加工後の溶接部の仕上げを行います。
肉盛り溶接部や溶接により発生した凹凸部分を、サンダー、グラインダー、精密やすり、サンドペーパーなど、適切な研磨機や仕上げ工具によって溶接面をならして平らに仕上げたり、溶接時に発生した溶接焦げ跡を除去します。
また、これまでの製作過程において表面に傷がなどが付いていれば、これらもこの時点で仕上げを行います。
詳しく >> 仕上げ加工(近日UP)
7.メッキ、アルマイト、塗装、シルク印刷などの表面処理
めっきや塗装の必要がある製品については、仕上げまでの全ての加工が完了したこの時点で必要な表面処理を行います。
表面処理は、製品の材質や用途、処理の目的(防錆、装飾・外観の向上、金属表面への機能付与)により、適切な処理が行われます。
詳しく >> メッキ、アルマイト、塗装、シルク印刷などの表面処理(近日UP)
8.ビス止めなどによる組み立て・組付け
複数の部品点数から構成される製品など、完成品としては組み立てが必要となるようなものについては組み立てを行います。
9.検査・納品
必要な検査・点検(仕上がり寸法チェック、数量など)を完了し、納品となります。
実際に加工を行った人が寸法検査をすると、正しく製作できているという先入観が入り、ミス・間違いを見逃す確立が高くなる傾向があるため、図面との照合による寸法検査は加工者とは別の人が行うのが望ましいです。
関連情報・参考ページ
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